ゴルフ場2030年問題を乗り越える採用戦略
地方ゴルフ場の採用は、いま明らかに転換点に入っています。2024年度のゴルフ場利用者数は8,750万人で、2023年度からは減少したものの、コロナ前の2019年度はなお上回っています。一方で、2025年2月末時点のゴルフ場数は2,154場まで減少し、2010年度以降の15年間で273場が閉場しました。つまり、利用が完全に消えたわけではないのに、支える施設数と働き手の余力は細っている、というのが今の現実です。
さらに見逃せないのが、利用者構成の変化です。2024年度は70歳以上の利用者が2,004万人、全体の22.9%を占めました。日本ゴルフ場経営者協会は、急減ではないものの、今後5年以内にこの層が減少に向かうとみています。つまり地方ゴルフ場は、主力顧客の高齢化と、現場を支えてきたベテラン人材の高齢化に、同時に向き合わなければなりません。これから必要なのは、単なる欠員補充ではなく、2030年までに人材構成そのものを作り替える採用戦略です。
ゴルフ業界が抱える2025年問題とは
日本のゴルフ業界では、2025年問題が避けて通れない現実となっています。特に、団塊の世代が75歳以上となり、これまでクラブを支えてきた主要なゴルファー層のリタイアが加速する見込みです。この層の減少は、単なる会員数の減少に留まらず、ゴルフ場運営の根幹に関わる問題を引き起こします。
ゴルフ人口が減少する中、サービス提供の質を保つためには、新しい世代へのアプローチが不可欠です。しかし、若い層にとって、ゴルフは必ずしも「身近なスポーツ」ではなくなっています。
こうした背景には、経済状況の変化、ライフスタイルの多様化、そしてゴルフへのイメージの固定化といった要因が絡んでいます。
ゴルフ業界の課題を解決するためには、若者に向けた柔軟な働き方の提供、最新の情報発信、そして業界自体の魅力再定義が求められています。特に、地方ゴルフ場では、地元に根差した取り組みが成功へのカギを握ります。
ゴルフ場の2030年問題とは
ゴルフ場の2030年問題とは、利用者層の高齢化と働き手不足が重なり、これまでの運営の前提が通用しにくくなる状況を指します。とくに地方ゴルフ場では、主力顧客の変化に加えて、現場を支えてきたベテランスタッフの高齢化も進んでおり、採用と育成の見直しが避けられません。ここではまず、2030年に向けて何が変わろうとしているのかを整理します。
顧客の高齢化と働き手不足が同時に進んでいる
まず前提として、ゴルフ業界を「ただ縮んでいる市場」とだけ捉えるのは正確ではありません。笹川スポーツ財団によると、20歳以上でゴルフ(コース・練習場)を年1回以上行う人口は2024年に912万人、実施率は8.9%で、2020年以降は増加傾向にあります。つまり、ゴルフへの接点そのものは一定程度保たれており、課題は単純な需要消失ではなく、誰がプレーし、誰が支えるのかという構造の変化にあります。
なお、この「912万人」は個人ベースの実施人口であり、先ほどの「8,750万人」は延べ利用者数なので、両者は別の指標です。地方ゴルフ場にとって重いのは、顧客の高齢化と働き手不足が同時に進んでいることです。2024年度は1ゴルフ場当たりの利用者数が40,286人となり、4年連続で4万人を超えました。これは1981年から1997年の第3次ゴルフブーム以来の水準です。ゴルフ場数が減っているぶん、現場のピーク負荷は軽くなっていません。施設数が減り、利用者構成が高齢化し、それでもサービス品質を保たなければならない。この三重苦が、地方ゴルフ場の採用を難しくしています。
2025年問題は終点ではなく2030年への入口
2025年問題は「終わった話」ではありません。2026年1月度の全国ゴルフ場利用者数は前年同月比4.7%減の516.8万人で、主に70歳以上が対象となる非課税利用者数も4.7%減の118.0万人となり、3カ月連続のマイナスでした。日本ゴルフ場経営者協会はこの月次データについて、「団塊の世代」が全て後期高齢者となり、いわゆる2025年問題が顕在化しているとコメントしています。天候要因を含む単月データではあるものの、業界団体自身が高齢層依存のリスクを明確に意識し始めた点は重いと言えます。
しかも、その先には人口構造の変化が続きます。内閣府の2025年版高齢社会白書では、2024年10月時点で15~64歳人口は7,373万人まで減っており、総人口は2031年に1億2,000万人を下回ると見込まれています。だからこそ、地方ゴルフ場は「2025年をどう乗り切るか」ではなく、「2030年までに、若手・女性・未経験者を含む新しい人材基盤をどう作るか」で考えるべきです。ここから先は、採用のやり方を変えたゴルフ場と、変えられなかったゴルフ場で差が開いていきます。

地方ゴルフ場の採用が難しくなる3つの理由
地方ゴルフ場で採用が難しくなっている背景には、単なる人手不足だけではない構造的な原因があります。応募が少ない、定着しない、採れても育ちにくいという悩みは、実は採用の前提や伝え方に原因があることも少なくありません。ここでは、今の採用が機能しにくくなっている主な理由を3つに分けて見ていきます。
ゴルフ経験者前提では母集団が足りない
地方ゴルフ場の採用が苦しくなる最大の理由は、募集対象を自ら狭めていることです。業界団体の高齢者活躍ガイドラインでも、ゴルフ場業界では若年者の採用が非常に難しく、その背景として、勤務地が山間部に多いこと、土日祝日に仕事が集中しやすいこと、休日面で敬遠されやすいことが挙げられています。こうした環境で、さらに「ゴルフ経験者」「業界経験者」を前提にすると、応募の入口は一気に細くなります。
これからの採用では、ゴルフが好きな人を待つのではなく、接客が好きな人、自然の中で働きたい人、地域に根差して働きたい人まで対象を広げる発想が欠かせません。ゴルフ場の仕事は、必ずしも最初から競技知識が必要な仕事ばかりではありません。むしろ、未経験者が入りやすい入口をつくり、入社後に覚えられる設計を整えた方が、2030年までの人材確保には現実的です。
集客サイトの延長では求職者に届かない
もう一つの理由は、採用情報の見せ方です。ゴルフ場のホームページは多くの場合、料金、アクセス、コース紹介、レストラン案内など、来場者向けの設計になっています。その中に採用情報を少しだけ置いても、求職者にはほとんど届きません。採用ページは、会社案内の一部ではなく、応募前の不安を解消するための専用の導線として作る必要があります。
求職者が知りたいのは、コースの魅力よりも、「自分にできる仕事か」「どんな人が働いているか」「未経験でも大丈夫か」「休み方や働き方はどうか」という点です。つまり採用情報は、ゴルフ場の魅力を語る場ではなく、働く側の疑問に答える場に変えなければなりません。
ベテラン依存の運営では技能継承が間に合わない
ルフ場の運営は、長年の経験に支えられてきた部分が大きい産業です。日本ゴルフ場経営者協会のガイドラインでも、お客様対応の接遇スキルや、良好なコースコンディションを維持する技術・技能は、短期間では身につかないと整理されています。言い換えれば、ベテランがいるうちに知識と判断を見える化しなければ、採用しても育成が追いつかないということです。
特に地方では、この問題がより深刻です。業界団体の雇用状況実態調査でも、雇用難は三大都市圏以外でより深刻になりやすく、非正規人材の不足も大きいと整理されています。しかも同調査では、多くのゴルフ場が労働力不足を経営上の大きな問題と捉えつつ、人的サービス中心の業態ゆえにIT化だけでは解決が難しいと考えている実態も示されました。だからこそ、採用と同時に、教育の仕組み化が不可欠です。

2030年に向けて採るべき人材像
これからの地方ゴルフ場の採用では、これまでと同じ人材像だけを追いかけていては間に合いません。大切なのは、経験者に限定せず、若手、女性、未経験者、副業人材、シニア人材まで視野を広げながら、自社に合う人材を見つけることです。この章では、2030年に向けて本当に確保すべき人材像を整理します。
若手未経験者は「育てる前提」で採る
2030年に向けた採用では、若手未経験者を外してはいけません。2024年のゴルフ実施率は年代別に大きな差が出ておらず、20歳代は2022年から4.0ポイント上昇しました。ゴルフ経験が豊富な若者だけを探す必要はなく、ゴルフに触れたことがある、あるいはスポーツや接客に関心がある層まで含めて入口を広げる方が、母集団は作りやすくなります。
採用基準も見直すべきです。最初から完成された人材を求めるのではなく、あいさつができる、体を動かすことに抵抗がない、段取りを覚えようとする、チームで働ける、といった素地を見る採用に変えるべきです。地方ゴルフ場に必要なのは、経験者の取り合いに勝つことではなく、未経験者を戦力化できる仕組みを持つことです。
女性スタッフは「補助戦力」ではなく主力候補として考える
女性の採用は、今後の地方ゴルフ場にとって大きな成長余地です。2024年のゴルフ(コース・練習場)人口は女性が159万人、実施率は3.0%でした。とくに20歳代女性の実施率は6.0%で、笹川スポーツ財団の調査では過去最高となっています。プレーヤーとしての女性接点が増えているなら、働き手としての女性にももっと門戸を開くべきです。
大切なのは、女性を「採れたらよい人材」ではなく、最初から主力候補として設計することです。フロント、マスター室、キャディ、広報、予約対応など、女性が力を発揮しやすい領域は多くあります。採用広報では、制度だけでなく、実際に働く女性の写真、インタビュー、シフト例、更衣室や休憩環境などを具体的に示し、「歓迎します」ではなく「活躍しています」と伝えることが大切です。
短時間・副業・シニア人材も戦力に入れる
フルタイム正社員だけで人を揃える発想も、2030年にはますます難しくなります。業界団体の雇用実態調査では、労働力不足への対応として高齢者の就業促進や女性の雇用促進への関心が高いことが示されており、ガイドラインでも、性別・年齢・キャリアにこだわらない多様性重視の人材戦略が必要だとしています。
そのため、朝だけ働ける人、土日だけ入れる人、副業で繁忙日を支えられる人、教育係として経験を活かせるシニア人材など、働き方を分けて設計することが重要です。地方ほど人口規模は限られますが、その分、地元の多様な働き手を組み合わせる発想が効きます。採用は「一人で全部できる人」を探すことではなく、「現場の負荷を分解して、合う人を当てること」だと考え直す必要があります。
若い世代と女性に響く訴求ポイントとは
人を採るには、誰を採りたいかを決めるだけでは足りません。相手に合わせて、働く魅力や安心感をどう伝えるかまで設計してはじめて、応募につながります。とくに若い世代や女性は、給与や条件だけでなく、成長実感、働きやすさ、職場の雰囲気まで見て応募先を選んでいます。ここでは、そうした層に響く伝え方のポイントを整理します。
成長ストーリーとキャリアの見える化
若手採用でまず変えるべきなのは、求人の見せ方です。仕事内容だけを並べても、「結局どんな力がつくのか」が見えなければ応募にはつながりません。地方ゴルフ場の仕事には、接客力、調整力、段取り力、自然環境に関する知識、現場マネジメント力など、他業界でも通用する力が多く含まれています。だからこそ、採用広報では「何をするか」だけでなく、「どう成長できるか」まで書くべきです。
たとえば、フロントから予約管理や現場調整へ、キャディから教育担当へ、コース管理からチーフやグリーンキーパー補佐へ、といった道筋を見せるだけでも印象は変わります。ゴルフ場の仕事を「単発の作業」ではなく「積み上がるキャリア」として見せられるかどうかが、応募率に差を生みます。
働きやすさと両立しやすさを具体化する
「働きやすい職場です」という表現だけでは、今の求職者には届きません。実際に必要なのは、どの時間帯に働くのか、繁忙期はどうなるのか、希望休は出せるのか、短時間勤務はあるのか、子育てや介護との両立は可能か、といった具体情報です。とくに女性採用を強化するなら、休憩室、更衣室、トイレ、シフト調整、ハラスメント相談体制などを曖昧にせず書くべきです。
地方ゴルフ場は、都市部の企業のように給与水準だけで勝負しにくい場面があります。だからこそ、働き方の柔軟性、通勤のしやすさ、地域に根差して長く働ける安心感など、別の魅力を言語化する必要があります。条件を盛るのではなく、実態を具体化することが信頼につながります。
未経験でも始められる安心感を先に伝える
「未経験歓迎」という言葉だけでは不十分です。求職者が本当に知りたいのは、「何をどこまで教えてもらえるのか」「最初の1カ月で何を覚えるのか」「一人立ちまでどれくらいか」という点です。ここが見えないと、ゴルフ経験がない人ほど応募をためらいます。
採用サイトや求人票には、入社初日、1週間、1カ月、3カ月のイメージを書いてください。たとえば、初日は施設案内と基本ルール、1週間で先輩同行、1カ月で一部業務を担当、3カ月で基本業務を一人で回せるようになる、という形です。安心感は「大丈夫です」と言い切ることではなく、育成の流れを見せることで生まれます。
職種別に変えるべき採用メッセージ
ゴルフ場の仕事は、キャディ、フロント、マスター室、コース管理など、職種によって求められる役割も魅力も大きく異なります。それにもかかわらず、すべての職種を同じ言葉で募集してしまうと、本来届くはずの相手に響かなくなってしまいます。この章では、職種ごとにどんな見せ方をすべきかを具体的に考えていきます。
キャディは「接客」と「伴走」の仕事として伝える
キャディ採用では、体力仕事の印象だけを前に出さないことが大切です。採用広報では、キャディを「お客様の一日を気持ちよく支える接客の仕事」として伝えた方が、未経験者にもイメージが湧きやすくなります。人と話すのが好きな人、外で働きたい人、スポーツやサービスに関わりたい人に向いている仕事だと整理してあげると、応募の間口は広がります。
そのうえで、最初から完璧な接客やプレー知識を求めないことも明記しましょう。研修同行の回数、先輩がどこまでサポートするか、歩数や勤務イメージなどを先に出すことで、仕事の難しさより「自分にもできそう」が伝わります。
フロント・マスター室は「運営を支える仕事」として伝える
フロントやマスター室は、受付業務のように見えますが、実際には予約、来場対応、プレー進行、問い合わせ対応など、ゴルフ場全体の流れを支える中枢です。採用メッセージでは、単なる事務ではなく、「現場を回す調整役」として見せた方が魅力が伝わります。
この職種は、ホテル、飲食、小売、旅行、医療受付など、異業種の接客経験とも相性が良い領域です。したがって、求人票では「ゴルフ知識」よりも、「人と接する仕事の経験」「気配り」「段取り力」を歓迎要件に置いたほうが、対象を広げやすくなります。
コース管理は「自然を守る専門職」として伝える
コース管理は、芝刈りや清掃の延長に見せてはいけません。実際には、芝の育成、病害対応、散水、景観維持、天候への対応など、ゴルフ場の商品価値を守る専門職です。採用メッセージでは、「自然の中で働ける」だけでなく、「コース品質をつくる技術職」であることを伝えるべきです。
とくに若手未経験者には、重機や機械の扱い、季節ごとの管理、資格取得、将来のチーフ職といった成長要素を見せると、職業としての像が立ちやすくなります。裏方ではなく、ゴルフ場の評価を支える主役の一人として位置づけ直すことが重要です。
採用サイトで伝えるべき5つの情報
採用サイトは、会社の紹介ページではなく、求職者の不安を解消し、応募を後押しするための場所です。仕事内容が見えない、未経験でもできるかわからない、職場の雰囲気が伝わらないといった不安が残ったままでは、興味を持っても応募にはつながりません。ここでは、地方ゴルフ場の採用サイトに必ず入れておきたい情報を5つに整理して紹介します。
1日の流れ
求職者が最も不安に感じるのは、仕事の実態が見えないことです。そのため採用サイトでは、職種ごとの1日の流れを必ず載せるべきです。何時に出勤し、午前中は何をし、忙しい時間帯はいつで、休憩はどのように取り、何時ごろ退勤するのか。ここが見えるだけで、応募の心理的なハードルは大きく下がります。
研修・教育体制
次に必要なのは、未経験者向けの教育情報です。入社後に何を教えるのか、誰が教えるのか、独り立ちまでの目安はどれくらいか。これを曖昧にせず書くことで、「経験がないから無理かもしれない」という離脱を減らせます。地方ゴルフ場ほど、教育が丁寧な職場であること自体が差別化になります。
キャリアパス
長く働くイメージが持てない仕事には、応募が集まりにくくなります。採用サイトには、職種ごとのキャリアパスを入れてください。フロントから責任者へ、キャディから教育担当へ、コース管理からチーフへ、といった実例があるだけで、「ここで数年働いた先」が想像しやすくなります。
現場スタッフの声と写真・動画
経営側のメッセージだけでは、どうしてもきれいごとに見えます。実際に効くのは、現場の声です。入社理由、最初に苦労したこと、続けられている理由、仕事の面白さを、若手、女性、未経験入社者それぞれの立場で載せると、採用サイトの信頼感は一気に高まります。写真や短い動画も、文字だけでは伝わらない空気感を補ってくれます。
スマホ応募導線
最後に、応募方法は徹底的に簡単にしてください。エントリーフォームが長い、履歴書送付が前提、連絡先が電話だけ、といった設計はそれだけで離脱を招きます。今は、スマホで見て、そのまま短時間で応募できることが前提です。1分で送れる仮応募、見学予約フォーム、LINE相談など、入口を軽くしておくことが重要です。
採用して終わりにしない、定着と育成の仕組み
採用活動の目的は、応募数を増やすことではなく、入社した人が安心して働き続け、現場で力を発揮できる状態をつくることです。とくに未経験者や若手を採るなら、入社後の教え方や職場環境まで含めて設計しておかないと、せっかく採用できても定着しにくくなります。この章では、採用後に差がつく定着と育成の考え方を整理します。
入社後3か月の教育設計を用意する
採用がうまくいっても、3カ月以内に辞めてしまえば現場は安定しません。だからこそ、入社後3カ月の育成設計を最初から作っておくべきです。初日に教えること、1週間で覚えること、1カ月で任せること、3カ月で期待する姿を、職種ごとに言語化します。こうしておくと、教える側の負担も減り、教え方のばらつきも小さくなります。
若手と女性が続きやすい職場環境を整える
定着に効くのは、給与だけではありません。相談しやすい空気、休憩の取りやすさ、教え方の丁寧さ、無理なシフトが続かない設計、ハラスメントを放置しない姿勢など、日々の働きやすさが大きく影響します。採用時に「働きやすい」と伝えるなら、入社後にその実感が持てるように、現場の運営そのものを整える必要があります。
ベテランの知見を見える化する
ゴルフ場は、経験値がそのまま品質に結びつきやすい産業です。だからこそ、ベテランの勘や判断を、マニュアル、チェックリスト、写真付き手順書、動画、OJTシートなどに落とし込む作業が欠かせません。技術継承が属人的なままだと、採用が成功しても育成の再現性が上がりません。2030年に向けて必要なのは、人を採ることと同じくらい、「教えられる形にして残すこと」です。業界団体も、技能・技術の伝承を競争力向上の鍵として位置づけています。
地方ゴルフ場が今すぐ着手したい3ステップ
採用課題はわかっていても、実際にどこから手をつければよいのか迷うケースは少なくありません。大がかりな改革を一度に進める必要はなく、まずは採用ターゲット、発信内容、応募後の対応という基本を見直すだけでも改善は始められます。ここでは、地方ゴルフ場が無理なく取り組める3つの実践ステップを紹介します。
ステップ1:採用ターゲットを見直す
最初にやるべきことは、「誰を採るのか」を広げて定義し直すことです。ゴルフ経験者だけなのか、未経験者まで含めるのか。フルタイムだけなのか、短時間や副業も対象にするのか。女性を強化対象にするのか。ここが曖昧なままでは、サイトも求人票も面接もぶれます。
ステップ2:職種別に求人票と採用ページを作り直す
次に、全職種を一つの原稿で募集するのをやめます。キャディ、フロント、コース管理では、向いている人も、響く言葉も、不安も違います。仕事内容、1日の流れ、研修、キャリア、先輩の声を、職種別に出し分けるだけでも反応は変わります。採用サイトを新設できなくても、まずは採用ページを職種ごとに分けるだけで前進です。
ステップ3:応募後の対応を早くする
最後に見直すべきは、応募後のスピードです。地方では、応募者の数が限られる分、一人ひとりの離脱が痛くなります。応募から初回連絡までの時間、面接日程の提示、見学案内、合否連絡の早さを整えるだけでも、辞退率は下げられます。採用は募集文だけで決まるのではなく、応募後の体験でも決まります。
2030年問題を越える鍵は、採用の前提を変えること
地方ゴルフ場の課題は、単純な「ゴルフ人口の減少」だけではありません。2024年のゴルフ実施人口は912万人まで回復し、女性や20代に明るい兆しもあります。一方で、2024年度の利用者の22.9%を70歳以上が占め、2026年には業界団体自身が2025年問題の顕在化を語り始めました。つまり今の課題は、需要がゼロになることではなく、顧客構造と人材構造の変化に、採用と育成が追いついていないことです。
2030年に向けて地方ゴルフ場が生き残るためには、ゴルフ経験者だけを待つ採用から卒業し、若手、女性、未経験者、短時間人材まで含めて人材の入口を広げる必要があります。そして、採用サイトを求職者目線に作り替え、職種別に魅力と不安解消を整理し、入社後の育成まで設計することです。未来の仲間は、ゴルフ場の外にいます。だからこそ、採用の言葉と仕組みを先に変えたゴルフ場から、2030年の競争を有利に進められます。
よくある質問
Q.ゴルフ未経験者でも採用しやすい職種はどれですか?
入りやすいのは、フロント、マスター室補助、キャディ、補助的なコース管理業務です。重要なのは職種そのものより、未経験者向けの教育設計があるかどうかです。仕事内容の見せ方と、入社後3カ月の育成計画が整っていれば、未経験者採用は十分に現実的です。
Q.採用サイトと求人媒体はどう使い分けるべきですか?
求人媒体は「見つけてもらう入口」、採用サイトは「不安を解消して応募してもらう場」と分けて考えるのが基本です。媒体だけで仕事の魅力を伝え切るのは難しいため、詳しい仕事内容、1日の流れ、スタッフの声は自社の採用ページで補完する設計が有効です。
Q.女性スタッフの応募を増やすには何を見直せばいいですか?
制度、環境、見せ方の3点です。短時間勤務や希望休、休憩環境、更衣室などの実態を整えたうえで、実際に働く女性スタッフの声や写真を出すことが効果的です。2024年は女性ゴルフ人口が159万人、20代女性の実施率が6.0%で過去最高となっており、女性への訴求は採用でも十分に可能性があります。
Q.コース管理職の魅力はどう伝えれば応募につながりますか?
「芝を刈る仕事」ではなく、「自然と品質を守る専門職」として伝えることです。季節による変化、機械の扱い、芝管理の知識、資格取得、将来のチーフ候補という成長の道筋を見せると、職業としての価値が伝わりやすくなります。
本記事は、業界団体および公的機関の公開データをもとに、最新のゴルフ業界動向と採用課題を整理したものです。
本記事は、以下の公開データおよび調査資料をもとに作成しています。
- 公益社団法人 日本ゴルフ場経営者協会
ゴルフ場利用者数・施設数に関する各種統計
https://www.golf-ngk.or.jp/ - 公益社団法人 日本ゴルフ場経営者協会
「2026年1月 ゴルフ場利用税に係る月次報告」
https://www.golf-ngk.or.jp/riyousyasu/2026/2026.1.pdf - 公益社団法人 日本ゴルフ場経営者協会
「ゴルフ場業界における高齢者雇用ガイドライン」
https://www.golf-ngk.or.jp/ngk/2020/koureisyakoyouguideline.pdf - 公益社団法人 日本ゴルフ場経営者協会
「ゴルフ場業界の雇用状況実態調査」
https://www.golf-ngk.or.jp/news/2018/koyoujoukyouzitaicyousa.pdf - 笹川スポーツ財団
スポーツライフ・データ(ゴルフ実施人口・年代別動向)
https://www.ssf.or.jp/thinktank/sports_life/data/golf.html - 内閣府
令和7年版 高齢社会白書
https://www8.cao.go.jp/kourei/whitepaper/w-2025/html/zenbun/s1_1_1.html















